
次世代の生命保険比較!
保険は、事が生じてのち、原則として貨幣による最終的な経済的保障を提供する制度です。
不時の災害による死亡はいうまでもなく、寝たきりになって高額の保険金を受け取るよりも、まず大方の人が、少なくとも平均寿命とされる年齢に達するまで、健康で、幸せな生活ができることを望むでしょう。
保険に加入したからといって、私たちの生活や企業の経営を脅かす、さまざまな危険に遭遇しなくてすむわけではありません。
保険によって危険に対処するよりも、私たちにとって好ましくない事態の発生そのものを予防し、防止するほうが、個人的にも社会的にもはるかに好ましいのです。
ただ現実には、好むと好まざるとにかかわらず、保険への加入あるいは保険の利用が、生活危険の多様化でいちだんと日常化し、少子高齢化の進展でいっそう長期化してきています。
また企業を取り巻く危険はグローバル化してきてもいます。
まさに「現代は保険の時代」といってもけっして過言ではありません。
しかも、二〇世紀最後の一〇年間は、バブル経済崩壊後の長期的な不況が続く中で、保険業法の全部改正、日本版金融ビッグ・バン構想、日米保険協読の決着、などによって日本の保険産業を取り巻く社会経済環境は激変し、二一世紀にはいった今、日本の保険産業は一大変貌を遂げようとしています。
本書は、こうした時代に生きる読者の皆さんが、保険の基本を知り、日本の保険産業の現状を理解する際の一助になることを願って、可能なかぎり平易な表現を心がけて執筆しました。
本書を通じて、より多くの皆さんが保険を身近なものとし、それが究極的には福祉の向上と保険制度の健全な発展へとつながっていくことになるならば、筆者にとって望外の喜びです。
本書を出版するについては、日本経済新聞社の小谷雅俊氏に大変お世話になりました。
記して感謝します。
保険は、確率計算を応用した所得再分配のための社会経済的制度です。
生命保険と損害保険という保険の分類は、理論的には矛盾していますが、日本では広く受け入れられています。
保険に対する公的規制は、保険が国民経済の安定・成長に深く関わっていることから実施されます。
保険を理解するための視点
今日では、「国民皆保険・国民皆年金」という言葉に象徴されるように、保険は、私たちの生活に浸透しています。
保険を抜きにしての現代人の生活は考えられません。
しかし、多くの日本人は保険について十分には理解していないようです。
たとえば、保険大国である日本の生命保険会社の消費者向けのキャッチ・コピーのキー・ワードとして、なぜかごく最近まで「愛」「夢」「ふれあい」などが頻繁に使用されていました。
生命保険は、こうした次元で考えたり、関わったりする制度や事業なのでしょうか。
愛情や感情とはまったく無関係というわけではありませんが、生命保険にかぎらず、すべて保険は社会経済的制度であり、その経済的合理性と限界について、消費者が十分理解していたならば、おそらく生命保険会社の対応は違っていたことでしょう。
まず保険において問題にすべきは、「偶然性を有するとされる事象によって、撹乱される可能性がある、人間社会における物質的な資財の生産-流通-消費の過程を、いかに円滑に循環させていくか」であり、そのためには、「いかに貨幣の流通を操作すればよいか」なのです。
資財の生産-流通-消費のあり方は、時代により、国により、さまざまに変化して今日にいたっています。
したがって、保険も、社会経済のあり方とともに変化し発展してきました。
現代の保険について考えるということは、とりもなおさず現代の社会と経済について考えるということです。
日本では、保険といえば、生命保険と損害保険を思い浮かべる人が多いようですが、私たちの周囲には、実にさまざまな保険が存在しています。
たとえば、各種の協同組合が運営している共済も、保険の一種です。
少子高齢化が進展していく中で何かと論議の的になる、年金保険や介護保険などの、非営利保険にしてしばしば強制保険でもある、社会保険と呼ばれる保険も存在します。
一概に保険といっても、その中には実にさまざまな性格・特徴を持つ保険が含まれています。
そこで、各種の保険と呼ばれる仕組みに共通してみられる性格と他の仕組みとの相違点を整理して、「保険とは何か」を、まず理解しておく必要があります。
「保険とは何か」「いかに保険を理解するか」「いかなる目的のもとに、いかなる手段と組織によって、保険は運営されるのか」などについて考究した成果を体系化したものを保険学説といいます。
保険学説は、制度・事業としての保険が発展してくる過程で変化してきました。
必ずしも順番に、また個別に生じた変化ではありませんが、その大きな流れは次の通りです。
保険を契約関係として法律的にとらえる立場から、保険を社会経済的制度としてとらえる立場への変化。
特異な性格の契約としての保険の位置付けから、金融サービス・金融商品の一種としての保険の位置付けへの変化。
心理的な保険加入動機を重視する研究方法から、保険の社会経済的な機能を重視する研究方法への変化。
保険会社に代表される保険者の視点からの保険の考察から、保険加入者の視点からの保険の考察への変化。
損害保険中心の理解から、損害保険と生命保険の一体的な理解への変化。
公的保険と私的保険を異質なものとして峻別する姿勢から、公的保険と私的保険の関係を重視する姿勢への変化。
保険のアウトサイダーとしての共済の異端視から、共済を協同組合による保険事業として把握し、総合的に民間保険事業を把握しょうとする視点への変化。
保険の原理と技術の絶対視から、保険の原理と技術の相対視への変化。
保険の金融機能を中心にした分析から、保険と不確実性・リスク・情報との関係に焦点を合わせた分析への変化。
保険資金の蓄積と投資運用に着目した研究から、保険資金の分配に着目した研究への変化。
以下では、こうした保険研究の流れを踏まえて、現代の保険を次のように理解し、その特徴と課題についての解説と考察を進めていきます。
「保険とは、多数の経済主体から、確率計算を応用した多様な方法で、予備貨幣としての分担金を徴収し、経済的保障に関わる各種の給付を行うことによって、これを再分配する社会的制度であり、その運営過程において、巨額の資金が、しばしば蓄積され投資運用される。」保険は、技術的には、偶然性を有する事象や不確実な事象について、多くの事例を観察し、その結果を統計的に処理して得られた、これらの事象が発生する確率を基礎にして成り立っています。
同質性・共通性・類似性を有する多くの人間や事物に対して特定の事象が発生する状況を観察すると、その事象が発生する経験的確率を兄いだすことができます。
この確率は、同種・同質の観察の対象が増えれば増えるほど、正確に把握できます。
たとえば、コイン投げを何度も繰り返して、表と裏の出る回数を観察してみてください。
コインを投げる回数が増えれば増えるほど、表と裏が出る回数が近似してくるはずです。
表と裏が、それぞれ二分の一の確率で出るはずです。
サイコロを用いて、同様の実験を行うと、一から六までの目が出る回数は、それぞれ近似してくるはずです。
つまり、一から六までのそれぞれの目が出る確率は、サイコロ投げの回数が増えると、六分の一にかぎりなく近付いてくるというわけです。
これを「大数の法則」といいます。
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